近年、日本の美しい文化が次々と失われていくのを強く感じています。
古い建物もその例外ではありません。誰かが「これは価値がある」と声を上げなければ、その存在意義に気づかれぬまま取り壊され、二度と戻らないものになってしまうのです。
先日、浮世絵にまつわるエピソードを耳にしました。
かつて日本人自身は浮世絵の良さに気づかず、海外の人々にその価値を指摘されて初めて見直すことになったそうです。
いま、伝統建築にも同じような状況が起きているのではないでしょうか。
日本の伝統建築は、時を経るほどに美しさを増していきます。
万物は常に変化するものですが、それを否定的にとらえず、むしろ肯定的に受け止める。そこに内面の静けさや深み、本質的な美を感じ取ろうとする精神が息づいています。
侘び寂びという感性を体現する日本独自の文化を、過去のものにしてはならない。そんな思いから、日本の伝統構法による建築物を守り継ぐプロジェクトが始まりました。
僕は、この活動に「建築写真」という形で参加することにしました。
大正8年竣工 O邸
今回撮影したのは、大正8年に竣工したO邸です。
場所は東海市。名古屋大空襲や伊勢湾台風といった大きな災害の影響を受けることなく、竣工当時の姿をほぼそのままに残しています。建具やガラス、外壁なども当時のままだそうです。
しかし、ここ十数年は空き家となっていました。
それでも大きく損なわれることなく残っているのは、日本の伝統構法、当時の職人の確かな技術の証だと感じます。
そしてこれから、このO邸は丁寧に修繕され、往年の美しい姿へと整えられていく予定です。
何より印象的だったのは、建具の開け閉めが今でも驚くほどスムーズにできること。
百年の時を経てもなお使い続けられる建築の力を、改めて実感しました。
そして僕は、この建物が修繕によって再び輝きを取り戻していく様子も、これから写真に収めていくつもりです。
過去から未来へとつながる時間の流れを、写真というかたちで記録していけたらと思います。
浮世絵がかつて「外からのまなざし」で価値を見出されたように、いま私たちが自らの文化を見直すときが来ています。
失ってからでは遅い。だからこそ、残された伝統建築を未来へどうつないでいくかが大切なのだと思います。









O邸プロジェクト
また折を見てアップしますね
建築写真家 近藤雅美
愛知、岐阜、三重、東海地区を拠点に全国対応 【撮影対応エリア】